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2010年03月22日

漫画が危ない!?東京都の青少年健全育成条例改正案

漫画が危ない。
詳しい条文全体については【表現規制反対!】東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正案【問題多すぎ!】 弁護士山口貴士大いに語るを見ていただければ。
なお、この案は継続審議が決まり、とりあえず3/19の可決は免れた。

ちなみに俺は児童ポルノ規制に反対なわけでも、一部漫画の規制に反対なわけでもない。
確かに、一部かなり危険なものがあるのは知っている。これらに関しては、何らかの対処が必要かもしれないが、ほぼゾーニングで解決できる。規制が必要なほどのものはごく一部であり、それは「公然と普通にコンビニや本屋に並んで」はいない、と思っている。

この条文自体、全体的に問題多すぎなのだが、直接関わってくるのは話題になってた「非実在青少年」の項目。
早すぎる審議期間、案を出すのに協力してる人々など、背景的にも疑いたくなることはたくさんあるのだが、そこまでやってるとぶっちゃけわけがわからなくなってくるので、問題となる条項のみ考えてみよう。

第七条中「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」を「次の各号のいずれかに該当する」に改め、同条に次の各号を加える。
 一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
 二 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

 第八条第一項中第三号を第四号とし、第二号を第三号とし、第一号の次に次の一号を加える。
 二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもので、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく阻害するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

 第九条第一項中「前条第一項第一号」の下に「又は第二号」を加える。

 第九条の二第一項中「第八条第一項第一号の東京都規則で定める基準に照らし、青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認める」を「次の各号に掲げる基準に照らし、それぞれ当該各号に定める」に改め、同項に次の各号を加える。
 一 第八条第一項第一号の東京都規則で定める基準 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
 二 第八条第一項第二号の東京都規則で定める基準 非実在青少年を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの


これが該当部分で、特に問題となる「非実在青少年」に関するのが太字の部分。

さて、この案について初めて知ったとき、おれはぶっちゃけ二次エロのかなり悪質なの(特に小学生題材とか、強姦を題材とかにして、しかも18禁でもないもの)が対象なのだと思っていて、大して気にしてなかったが、断じて違う。
これがそのまま通ったならば、まず間違いなくRookies、寄生獣、ろくでなしBLUESは発禁になる。桂正和の作品はたぶん全て。高橋ツトムの作品もほとんどダメ。無限の住人も危ない。GTO、シバトラ、サイコメトラーEIJIもかなり危険。
解釈次第で、金色のガッシュ、るろうに剣心、ONE PIECEすら引っかかりかねない。

何がおかしいか?
年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写

「その他の人の年齢を想起させる」
ここがあいまい。つまり、「誰かがそのキャラを18歳未満と認識することがあれば」規制対象になりうるわけだ。
「非実在青少年による性交類似行為に係る非実在青少年の姿態」
性交類似行為とはどこまでか?一部ではキスもダメ、という噂が流れているくらいだ。
確かに都職員が言うように、現在での定義はある程度確立されているが、それはあくまでも「現在の時代の解釈」である。よって、今後どうにでも変わるものだ。
もし、キスもダメ、抱擁もダメ、という判決が全く違う事件でなされたならば、ここはいくらでも解釈が変わってくる。
「視覚により認識することができる」
認識するのは誰か?もちろん都職員もしくは都知事である。
現在の職員が解釈について、「恣意的な運用は不可能」と言ったらしいが、そんなことは絶対にない。
時によって、都職員も知事も変わる。今の職員がどんなに釈明したところで、この条文ならば別の人間が別の解釈で運用することは限りなく可能だ。
さらに「健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」
健全の定義はどこか?何が健全なのか?青少年とは18歳未満である。女性ならば16歳で結婚も可能であるのに、「性交または類似行為」を知らないことが健全なのか?
確かに小学校低学年以下にはあてはまるかもしれない。しかし、「青少年」とひとくくりにして全てをまとめて考えるのは危険すぎる。年齢に応じた教育こそが「健全」じゃないのか?
さらにだ。「おそれがある」なんて誰に判断できるのか?少なくとも科学的、合理的には証明できない。これは「可能性」があれば「おそれ」がある、ということになるからだ。
さらに「みだりに」という表現。
これは法解釈としては、「正当な理由なく」ということ。
漫画の一コマに「正当な理由」がなきゃいけないのか?そんな作品つまらないだろ。遊びが全くなくなるぞ。

さて、ここまで考えた上で、一部作品について考えてみよう。
・Rookies
第一話で安仁屋が部室のソファで女生徒を抱いているシーンがある。
完全にアウトだ。
18歳未満の性交を描写している。ゆえにこれは絶対に有害図書指定になる。
寄生獣、ろくでなしBLUESも全く同じ理由でダメ。

・GTO
ここに登場する生徒は中学生。
例えば麗美が自殺未遂後、鬼塚が助け、救急車の中で裸で暖めていたあのシーン。かなり危険だ。
麗美が寝ている鬼塚に胸をもませたが、これは「類似行為」に当てはまると思われる。

・シバトラ
最初のエピソードで、虐待を受けていた美月が服を脱いで柴田に抱きつくシーン、アレがすでにやばい。
さらにメイド喫茶編では小学生の八木由梨亜が性的虐待の被害者になりそうになり、それから逃れるために人を殺してしまう。これは「残虐性を助長させる」と捉えられかねない。
さらに同じメイド喫茶編では、エンジェルこと美香絵は高校生であるにもかかわらず援助交際を行っている。このシーンもアウト。
覚せい剤編では町田リカが義理の父から性的虐待を受けていたシーンもある。これもダメになる。
というか、少年犯罪に深く踏み込んだ作品だから仕方なくないか?
これ全部「描くな」ってなったら、こういうこと題材とした深い作品は抹消されるぞ?

・金色のガッシュ
これは解釈次第だが、モモンがティオのスカートめくったあのシーンは危険。
見かけは児童。そして「性交類似行為」を拡大解釈して、「性的に反社会的な行動全般」とした場合だが。
さらにいうと、児童ポルノの問題とこの条例は密接に結びついている。
するとだ。将来的にさらに拡大解釈されると、「ガッシュの裸で歩き回る行為」自体が引っかかる可能性も否めないわけだ。
しかしだ。ガッシュ見て犯罪者になるやつがいるならば、むしろ見てみたい。
あの感動超大作が引っかかる可能性があるってどうよ?

・るろうに剣心
これも拡大解釈すると当てはまる。
「十字傷の追憶」。あの当時剣心は15。当時はもう元服後だ。
しかし、これは今の条例では「青少年」に当てはまる。
すると、この年齢で「人斬り」として働いていた頃のあのシーンは、全て「青少年の描写によって」「残虐性を助長する」と捉えることができる。
当時は合法(?)だったにも関わらず、だ。
ここではさらに遡及法の問題も絡んでくるとは思うが、下手をすれば時代物は描けなくなる。

・ONE PIECE
どこが危険か?とお思いだろう。
確かナミの設定は18だったと記憶してるが(後で確認しときます)、彼女が17か18か、誰に証明できる?
するとだ。アラバスタの大浴場における「幸せパンチ!一人10万ね」これは悪意ある解釈をすれば、売買春類似行為と見ることもできる。「裸を見せて、対価として金銭を得る」これは条例に引っかかるよね。

ざっと上げただけでも、これだけのことが危険にさらされる可能性がある。
どれもこれも普通に「良作」なはずだ。(好みにもよるだろうが)
これらの描写が規制される可能性がある条例、問題ないといえる?
少なくとも、このあいまいな部分をなくし、拡大解釈が入り込む余地がないところまで条文を練るべきなのに、なぜあんなに拙速に進めようとしていたのかが全く理解できない。(2・24に上がって、3.19に可決しようとしていた。)

「表現の弾圧ではない」 東京都が青少年健全育成条例改正案を説明
なるほど、これを見る限り方向性としては間違っていない。
しかし、結局今後規制を行うのはこの職員に限らない。だからこそ、法律の条文はきっちり吟味しなきゃいけないし、そうした上でも解釈論によって幅ができるものなのだ。
少なくとも、この条文のままで通すことを許してはならない。
現存の漫画、アニメの大半が規制対象になりかねないからだ。そんな日本を誰が望むのか?
最後に、非常に冷静に分析している記事のリンク。
緊急!東京都が児童ポルノ規制の美名の下、思想統制への道を開こうとしている
このとおり、俺は今、この案に賛成している方たちの大半が、本当に子供たちのことを心配している、という現状がなんだかやるせない。 Amazonコミック新刊情報
posted by tmin at 07:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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2010年03月02日

ここ最近のアツい漫画・アツかった漫画

2月・3月と俺的にコミックの発売がラッシュ!!
というわけでここ最近のアツ「かった」漫画・激熱の漫画をつらつらと。

・再始動・地雷震ディアブロ

再始動した高橋ツトムの原点作。
ま・さ・か、こうなっているとは・・・
舞台は地雷震終了後10年くらいたってるのか?スリル&リアルのときの小池彩が大人になってますね。
「俺にとって刑事であることは呼吸をするのと同じことだ」と言っていた響也は失明して引退してます。えぇーー!!
その響也を呼び覚まそうとする刑事が一人。
自らの故郷のため、家族のため、国を敵に回すかもしれない事件に立ち向かうため、響也に片目を提供して。

いや、すごいわ。これは。
俺としては「刑事でなくなった響也」ってのはなんかなしだったんだけど、それでも彼の根本は全く変わってないように見えますね。
この緊張感は、あの初代地雷震の後期の緊張感と変わっていない。
それでいて、過激さはむしろ加速している。
でもさ、江里子はどーなってるの?やっぱ刑事止めちゃったのかな?
Good!Morningがなかなか売ってなくて追えないので、コミックス追いになっちゃってるんだけど。
いや、ぶっちゃけ「今更?」とか思ったけど、買ってよかった。
ところで高橋ツトムは漫画描きすぎじゃね?体大丈夫なのか?

・御木本を食いに出る!クロサギ
 
ついに御木本喰いに出たクロサギ。
過去幾度となく、追いつめては失敗に終わった御木本喰い、本格始動!
執念の仕事。
いつもと同様、最高のリアリティ。これ読めば現代の詐欺、という犯罪を完全に理解できるといっても過言ではない。

しかし。
ストーリー的にもう行き詰まってるんじゃないの?
いや、vs.御木本はほんとに面白かったよ。
でも、俺としてはこれでクライマックスだと思ってたのさ。
宝条、鷹宮、桂木、そして神志名、それぞれの思惑と伏線を回収して。
しかし、そうはならなかった。ここが微妙。
話題的には現代社会に必須、とも言えるものなんだけど、ストーリー的にもう厳しい感じがするのよ。
続くことに意味がある作品だとは思うけど、ただ続けるための引き延ばしになるならば残念。
ま、まだわかんないですが。今後の展開は。

・どうぶつの国

エピソード0にシビレたのは俺だけじゃないはず!!と信じたい。
まだこれから、な作品なので何とも言えないけれども、たぶん雷句誠節全開。
「牙と爪だけのこのクソッタレな世界に喧嘩を売る」
このクロのセリフ、サイコー。
ガッシュもそうだったけど、彼の作品は出会いと別れ、そして成長と変化を深く描いてる。
サイコーだったのはエピソード0のセイゴ。
20090909233802744.jpg
生まれつき体が弱く、肉が食べられない山猫。
彼は「メロディ」に生きる意味を見出し、それを認めてくれたクロのために体を張る。
そしてそのセイゴから「メロディ」をもらい、変わり始めるクロ。
このエピソード0は最高だった。
本連載の方はまだいまいち盛り上がりに欠ける感じがするけど、よくよく考えるとガッシュも盛り上がり始めたのはわりと遅かったんだよね。コルル、ティオが登場してからどんどん加速して行った感じ。
今はまだ見守る段階かも?と個人的には思うけど、今後には超期待。

・クロス・ゲーム

惜しかった!
俺的には若葉の夢、超満員の甲子園のシーンを描いてくれればこれはタッチを越えたと思うんだけど。
瀬名戦、龍旺戦ともによかった。マジで。
なので余計に終わりのなんかちょっと中途半端感が・・・
しかし、これが終了し、最上の命医も第一部完でお休み、となると・・・大丈夫か?サンデー。
まぁ、ハヤテがあるから大丈夫なのかな?
これは今度読み返してこの作品で記事を書こう。あ、アニメはこれからが最高潮かも。

・怪物作・ONE PIECE

もう57巻ですよ!!
スリラーバーグ→シャボンディでちょっと減速気味かと思ったけど、全くの要らぬ心配でした!!
最高潮なインペルダウン→白ヒゲvs海軍の全面戦争。
かっこよすぎる!白ヒゲ。
そして切なくなる!エース。
この世界の頂上の決戦に、ルフィは「本来の仲間なしで」突入する。
もはや一年近くも麦わらの一味がまともに登場してないのに、このワクワク感、緊張感、そして衝撃と感動。
大体にして30巻を越える辺りでマンネリ感が出てきて、50巻を越えればもう「続く」ことを目的としてるんじゃないか、という作品がほとんどな中、50巻を越えてなお、むしろ加速していくこの作品はなんなんだろう?
そしてONE PIECEのないジャンプがどれほど薄っぺらく感じることか!(いや、今はHxHやってるからまだいいけどさ。
エースが死んだショックであの日動く気が起きなかったのは俺だけじゃないはずだ!!
様々な伏線が、一つの場面に向けて収束していく感じ、そして登場人物達の思いと行動、展開のスピード感、全てが規格外。
一コマ一コマの、1頁の、そこに集約された思いが、メッセージが、その密度が桁違い。
そしてまだまだ今後の展開に向けての「含み」は残されている。
単純な正義と悪でもない、割りきれない思いも、どうしても手が届かない悔しさも悲しさも、ともすればただ重くなってしまうテーマも、全てが「少年誌」としてふさわしい展開で、テンションでつづられていく。
きっと、今読んでる子供たちも、大人になって読み返すと違ったものが得られる。
今読んでる大人たちも、少年のころ抱いていた思いを蘇らせつつ、今だからこそ感じられるものがある。
これが読める時代に生きられていることを感謝したい。

まぁ、とりあえず5個だけど。
一部は今後次第で、その作品の記事を書こうかね。 Amazonコミック新刊情報
posted by tmin at 04:51 | Comment(4) | TrackBack(0) | 漫画論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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2010年01月03日

それが「漫画」として描かれる意味

表現手段は多々あれど、「漫画」であることは一長一短。でも、「漫画」としてそれを表現することが決められたのならば、「漫画という作品」であることが必要だと思う。
今や日本の漫画は、ただの娯楽ではなくなり、社会的に大きな影響を与えるものも多々あるのだが、漫画と他の表現手段を比較してみよう。
小説、映画、アニメ、ドラマなど、色々あるし、それぞれ好きなところ、嫌いなところもあるんだけど、俺にとって「原作が一番」というのはほとんどに共通して言えることで。
例えば漫画のアニメ化、ドラマ化。これはよろしくないものの方が多い様に感じる。なぜかというと、原作に置ける「間」とか、「そのシーン」の雰囲気が崩れてしまうから。
小説と漫画はわりと相性がよいようにも思えるが、基本的に「そのシーン自体」を想像させる小説に対し、漫画はそのシーンの「登場人物の心情」を想像させるという点において大きな違いがある。

それぞれを考えると、映画、ドラマ、アニメは受け手が受動的にならざるを得ない。それを利用してスピード感や緊張感をうまく出している作品は多いけど、やはり「当たり」は少なく思える。
印象的なシーンがあっても、印象的なセリフがあっても、それはすぐに流れて行ってしまう。無理に強調しようとすればしつこくなってしまうし、流してしまっては受け手に強く伝わらない。この点は非常に難しいのだが、これは作品によるもので、当然非常にうまく、よくできているものも多い。
例えば映画「プライベート・ライアン」最初と最後の戦場のシーンの迫力はまさに圧巻なのだが、ここで非常に感心したのは、近距離で爆発があった後、音が遠のき、周囲が遠のき、まるで目の前の風景が現実ではないように感じられるミラー大尉の視点の描写。アレは映像でないと表現できないものだろう。小説版もあり、これも読んだが、やはりこういう迫力は映像の方がより伝わる。

逆に。またもONE PIECEになるが、ベルメールさんが倒れるあのシーン。アレは漫画じゃないと伝わらない。あの名シーンを表現しようと努力したのだろうが、アニメではスローになり、繰り返しになり、その分スピード感がなくなってしつこくなってしまう。

ドラマになればなおさら。「いいひと。」には非常にがっかりさせられたし(アレはかなりもめたようだが)、スカイハイにおいては「お行きなさい」「お生きなさい」「お逝きなさい」の3つの意味からなる、同じ発音の言葉の意味を完全に表現できたようには感じない。「クロサギ」においては、多くのドラマがそうであるように、強引に恋愛要素を取り込むことによって原作のリアルさと深みを消し去ってしまっている。氷柱の「ただ覚えといて」というセリフ、アレは淡々と告白することによって、自分の幸せを願わない黒崎への氷柱の純粋な思いが表現されていたにもかかわらず、だ。また、淡々と「仕事」として詐欺をこなす黒崎は本来自らの感情として喜びや楽しみを出すことはほとんどない。彼が表に出すのは怒りや憎しみ、哀れみといった「負」の感情ばかりで、それが彼の自ら選んだ生き様への覚悟を表現しているのに、それも壊されていると感じた。

結局、原作者が「その表現方法」を選んだことにはそれなりの意味があるのだろう。この「意味」がない作品は、俺にとっては駄作になる。
もちろん、まれにだが、この原作の意味に忠実に表現されたものもあって、それは賞賛に値すると思うのだが。
ここが、俺が「原作」にこだわる理由で、原作でないものからその作品に入ったとき、何かしら得るものがあったと感じたら、原作を探す。それが小説であろうと、漫画であろうと、きっと原作には、原作者の思いがよりストレートに現れているからだ。

さて、話を漫画という表現手段に絞ると、例えばその1シーンに込められた意味が大きいことが多々ある。それをうまく使って、メッセージを伝えているのがいい作品の条件の一つだ。
一つのシーンに込められた意味、それを理解するために、受け手である我々読者は受動的である必要はない。セリフがないシーンに釘付けになり、数分間目が離せない、ということもままある。ページをめくって、早く続きを読みたいという思いと、そのシーンに、そのコマに、そのたった一言のセリフに込められた意味を果たして全て理解できたのか、もっと意味があるんじゃないかと、目を離せない、離したくない思いとの葛藤、それこそが漫画の醍醐味だと思う。
次のページに行ったはいいが、また1ページ戻る、そんなことを繰り替えしながら読む作品もある。本当に感動したとき、そのシーンは、そのページは目に焼き付けるまで眺めるものだ。

例えばSLAM DUNKの山王戦。アレは名シーンが多すぎた。「感傷的になるな。まだ何かを成し遂げたわけではない」に込められた思いと葛藤、「俺は今なんだよ」の一言に込められた固い決意と、見守る仲間たちのセリフのない、表情だけに込められた思い、ラストプレイの効果音もセリフもない数ページの、一コマ一コマに釘付けにならざるを得ない迫力と、漫画故のスピード感。
こういうことは「漫画であるからこそ」表現できるものだと思っている。

それはリアルにもより強くなって受け継がれていて。セリフは決して多くないんだけれど、そのたった一言、たった1コマの表情に表現されているものが多すぎて、読むのにすごく時間とエネルギーが必要になる。
最初の戸川と野宮の出会いの1on1で、車椅子を交換しろと言い出した野宮の「ハンデだ」という一言、ここに作者の大きなメッセージと、伝えたい価値観が込められている。「歩けない世界の100m8秒台」のセリフに込められた思いは量り知れないほど大きいものだろう。そして、「カタツムリが必死になって歩いた距離が駆け出した犬の一歩に」の表現、たった数ページに、生きる上での大きな悔しさと葛藤が込められている。

名作であればあるほどこういうシーンは多い。
たった1ページ、たった1コマ、たった一言が、画とセリフと効果、構成によって多大な意味を持つ。そのことに「漫画だからこそ」感動することが出きるのだ。
だからこそ、漫画には画力も構成力も必要なんだと思う。
セリフのない1ページの、1コマの、その表情によって全てを表現することだって可能だから。

きっと俺にとっての「良作」というのは、そういう作者のメッセージが込められたものなんだと思う。
もちろんただ笑ってほしいというようなものから、社会のあり方に疑問を投げかけるもの、価値観を揺さぶるものまで多々あるが、この「作者のメッセージ」が見えないものは、薄い。
作者の伝えたいことがあり、そこで作品が産まれ、その作品の登場人物たちのそれぞれの思惑があり、キャラごとの価値感や決意や、やりたいこと、向かいたい方向があって、それがまた作者のメッセージに向かって散り、収束していく。
その中に、知らなかった人生や、知らなかった価値感や、思いもしなかった世界がある。それはきっと、現実の人生を考えるきっかけになったり、生き方を変えるきっかけになったり、支えになってくれたり、一息つかせてくれるものだったり。
俺はもう、漫画なしでは生きられない(笑)
新しい出会いが楽しみだ。 Amazonコミック新刊情報
posted by tmin at 08:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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